テキストサイズ

方位磁石の指す方向。

第8章 scene 7

櫻井side



「はよ、雅紀」

「…んぁ?…ぁ、おはよー」

「寝不足?」

「うーん、そーかなぁ…?…ふぁ、」


大きな口を開けて
目の淵に溜まる涙をはらう。


「あんま無理すんなよ〜?」

「んー…どーだろね?
無理しなくちゃ俺、バカだからさぁ?
ついてけないんだよねぇ…」


諦めの表情を浮かべ、
俺をぎゅっと抱き締めてきた。


「っな、」

「しょーちゃんあったけぇ〜♪」

「や、めろっ…重い〜!!」


あひゃひゃってさっきとは打って変わって
明るい笑顔を浮かべる雅紀。

…切り替え変わんの早いヤツ…。


俺は雅紀のそんなところが
羨ましくて仕方がない。


「っあー、やっぱねっむい、」

「授業中寝んなよ?」

「わかってるよぅ…でも今日…
智いないからぁ〜…」

「…あ、ほんとだ。」

「気付くの遅いっ…!」

「風邪?」

「らしいね〜?
インフルじゃないといいけど…」


あー、心配だよー、なんて
机に頬をベッタリとつけて
唇を尖らせている。

…ふぅん。



……智くん、幸せなんだ…。



…そりゃ、
もともと好きだったから
好きな人の幸せは祝いたいけど。

だけど。


やっぱりまだ、
ザワついたりするんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ