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方位磁石の指す方向。

第8章 scene 7






電話を切ったあと、
すぐに睡魔に襲われた。


…勉強、どうしよ…。

机に放り出された課題を見て
ふう、と溜め息が漏れる。


…でも、いいや。

翔さんと話せたことが幸せで
この満ち足りた感覚のまま、
眠りにつきたい。

翔さんのこと以外、
なにも考えないで…。


「…ぁ、」


そういや、バレンタインデー
過ぎちゃったな…。

…や、でも。

うん。…そうだよね。
俺、恋人だけど、あの、その…

女じゃ、ないし。

貰ったって、
困るよね、うん。


…ホワイトデーに、渡せば、いい…よね?

ほら、会えないし。

会う時間とか、作れないし。

あっちはあっちで、忙しいし。



…なんて。

言い訳ばっか並べて。


「(俺ってズルいヤツ…。)」


自分に呆れながらも、
布団に潜り込んだ。

…あぁ、どうしよう。


どうしたら、
この緩んだ頬を押さえられるんだろうか。




幸せな夢を見た。


夢の中で俺は、
男なんかじゃなく、女で。

翔さんはもちろん男で。

人目を気にせずに、
キスしたり、手を繋いだり、
ハグなんかしたり。


…俺が女だったら、

俺が、…俺が男じゃなかったら、
よかったのになぁ…。


なんでこんなにも、
俺達は世間の目を気にしなくちゃ
ならないんだろうか。

…変なの。

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