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方位磁石の指す方向。

第8章 scene 7






そうは思っても、

やっぱりイライラして。


勉強なんて手付かずだ。

そもそも、
やる気もない。


この時間になったら毎日必ず、
連絡が来たのに。


…わかってる。

原因は、自分自身だって。


二宮にあんな顔させたのは
間違いなく俺自身だ。


頑張ってね、とは言ってくれたけど、
寂しそうにしていたことは
わかっていた。

だけども。

俺は二宮の期待に応えることは
できなかったんだ。

だから…だから、
愛想を尽くしてしまったんだろうか…?

俺という愚かな人間に。



~♪


電話をかけても、
やっぱり繋がらない。


ふ、と溜め息をついて、

『なんかあった?』

って、アホみたいな文章を送った。

原因はわかってるのに、
わからないふりをして。


「あぁ、もう…」


───…諦めを促す自分がいて
その甘美な誘惑に身を委ねたくなる。


「…仕方、ねぇじゃねえかよ…
俺だって…!」


どうしてこうなってしまったのか、
なにが悪かったのか、
もうなにもわからなくなる。

なにをすれば、二宮は俺のことを
許してくれるのだろうか。


「あんな…楽し、ってのに…」


毎日、二宮が離れてくんじゃないかって
不安ばかりが根差す日々で、
二宮はこんな俺を迎え入れてくれた。


あの日々が、

あの時間が、

まだ付き合って半年弱しか
過ぎていないあの時間が、

今の俺にとっては、

手に届かないほど遠く、愛おしい。

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