
方位磁石の指す方向。
第8章 scene 7
なにかよっぽどの理由が
あったんだろう。
…いやでも。
相談なしに…?
そりゃ、俺は兄弟でも親でもないから、
そんなの当たり前かもしれないけど…
一緒に帰れないって言ったのも、
自分だけども…
バイトなんかしたら、
余計に会えなくなるじゃないか。
電話も、LINEも…
全部、できなくなるじゃないか。
…距離…置かれてるのか…?
「智くん…」
『うん?』
「二宮、起きてる…?」
『うん?起きてるよー?
今お風呂に入ってるよ。』
「…いつ、帰ってきた…?」
『うーん…もう2時間前かな?
ほら、潤くんと話してたみたいでさ。』
「…ふぅん、」
『?
やっぱりなんかあったの?』
「…いや、特になにもないよ。」
『そう?』
じゃあ、俺勉強するね。って
言われて、切れた電話。
…帰ってきてるのに、
見てないって…
どうゆうことだよっ…!
微かな苛立ちを覚え、
下唇をぐっと噛んだ。
…だめだ。
ここで堪えないと、
だめになる…。
二宮の手を離したら、
もう、戻れなくなる…。
