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君がいるから

第2章 きっかけ

二宮の教育が始まって4日目。

彼は、仕事を覚えるのは普通としても
資料をまとめる能力は…ずば抜けていた。

正直、俺もそれなりに自信はあるが
…それ以上だと思う。

実際、今までなかなか契約に至らずに足を運び続けていた案件が、たった1日で彼の資料によって上手くいっている。

まあ、後は…

その容姿で得すると言うか、女の子みたいな顔立ちと捨て犬みたいなウルウルした目でお願いされると

…断りにくい、と。

営業にも、その容姿は充分に効果的なんだ。


そして今日。

ついに智の会社への研修。

まあ、研修先は自分が決めるから

完全なる公私混同。

俺は朝からワクワクしていて

周りにそれを悟られないように

いつも以上に無表情を装っていた。

それに呼応するように


…二宮が来ない。

まさかたった4日でリタイア?

いや、それはないだろうとは思うけど

新人が遅刻、なんてのも俺からしたら許せない事態で

「二宮さんから、遅刻するって電話がありました」

たまたま電話を受けた後輩が報告をくれたから

「分かった。ありがとう」

って微笑んで返したのに

彼は物凄く怯えて
逃げるように席に戻っていった。

あ、これか。

笑ってるのに怖いって。

…仕方ないだろ。今はかなりイラついてる。


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