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君がいるから

第2章 きっかけ

何でこう、智って照れる事をサラッと言えるんだ。

そんなところが、人を惹き付ける。

そのくせ、あまり人に興味を示さない。

「お誉めの言葉、アリガトウゴザイマス」

照れを隠すように、わざと両手をついて頭を下げた。

「どういたしまして」

顔を見合わせて、お互いが吹き出した。

「飲も」

智が残ったビールを飲み干して、すぐにおかわりを注文する。

「あ、俺も」

負けじと俺も、グイッと終わらせて同じようにおかわりを頼んだ。







月曜日のフロアは、少し騒がしかった。

配属の決まった新人が、初めてここに来る時の毎年の光景

女子社員、男子社員それぞれまずは容姿を楽しみにしている。

そりゃ、俺だって興味はあるけどね。

可愛い子が来るといいな、とか思うさ。…表情には出さないけど。

「おはよう~!」

いつものようにニコニコ笑顔で部長が入ってきた。

後ろには2人の新入社員。

緊張している顔が初々しい。

「さ、朝礼始めるぞー」

フロアリーダーの合図に、皆が席に座る。
ガヤガヤした室内が静かになったところで

「この、営業二課に決まった新人を紹介します」

部長の隣に立つ新入社員に、一斉に視線が集まった。

最初の子が名前を言ってから、よろしくお願いしますと頭を下げる。

そして、俺の担当する新人…

「二宮和也です。…よろしくお願いします」

さて、彼は吉となるか凶となるか

頭を下げた彼を「優しい顔」を作って見つめていた。









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