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今日も明日も

第70章 見えない鎖 Ⅷ



かずくんはただ、にゃん太から逃れようと俺を呼んだだけ

そんなのは分かってたけど、それまでの鬱々とした気持ちがその “分かってる“ 事を忘れさせてしまった


かずくんに戯れてるにゃん太を抱えあげ、クッションの上に降ろし

仰向けで浅い息をするかずくんに馬乗りになった

両手のひらを自分のそれで絡め、床に抑え込む


「まー、くん…?」

一瞬にして怯えた瞳に変わったかずくんが、おずおずと俺を見上げた

吸い寄せられるようにまだ赤い頬に唇を寄せると

かずくんの口から “やだ…“ と小さく呟かれ、その顔を横に背ける

そうする事で余計露になった頬にキスをした途端


「やだ…っ!やめて…!怖…怖いっ!!」

かずくんはパニックを起こしてバタバタと俺の下で暴れ始めた


…なんで?

最初は、かずくんから俺に触れようとしたじゃん

何も出来ないからって、その体を投げ出そうとしたのに

それなのに、どうして今は俺を拒むの?


「なんで?」

絡めた指にぎゅっと力を込める

だけどかずくんはぼろぼろと涙を流して震えていて

ただ “やめてください“ と何度も呟くだけだった

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