
今日も明日も
第69章 sweet trap
「…さっきの話」
「うん?」
絶頂を迎えた後の心地好い怠さに、雅紀の優しく頬を撫でる手が加わると眠くなりそうだ
顔の横に肘を付き、俺を見つめる目は未だに欲に満ちている
その優しい手付きとは裏腹に、いつでも先に進めるつもりなのが嫌でも分かった
それに、熱く誇張する雅紀自身がさっきから俺の腰に当たっている
だけど敢えて
イカされる前のあの一言を出してくるのは
雅紀には何か思う処があるのだろうか
「にのは…覚えてないかな」
「何を…?」
「3年前」
…3年とは、また短いような長いような
「電車の中」
「電車?」
勿体ぶらずに言えば良いのに
わざと区切って言ってみせるのは、…俺に思い出させたいからなのか?
けど、3年前も今も、電車は毎日のように乗っている
何せ通勤経路だからそれこそ朝なら時間も同じだ
嫌な事もたくさんある
勿論朝から気分が良くなった事も
そのどこかに雅紀が関わっている、と言うなら思い出すのは困難だと思うんだけど
「お前と電車で会ってるって事?」
雅紀は何も言わず、少し困ったように笑った
