
今日も明日も
第64章 見えない鎖 part Ⅴ
嬉しさのあまり抱き締めた事が、かずくんのトラウマを引き出してしまったらしいのはすぐに察しがついた
自分の軽率な行動が、せっかくの笑顔を台無しにしてしまった
手を握る事に拒否がないからと、油断してたのは俺だ
「かずくん、ごめん」
1日様子を見ただけで、急に分かった気になった俺が悪い
かずくんの今までを考えたら、そんなに簡単なものじゃない事くらい当たり前なのに
「ちが…っ、ごめ…なさ…っ」
ポロポロと涙を流すかずくんも、相手が俺だと分かっているからこそ震えまいと必死になっているのが窺える
「かずくんは悪くない。俺が悪い」
「………っ」
ふるふると首を振るかずくんは自分を責めている
どうやったら自分は悪くない、と分かってくれるんだろう
もう一度、俺だときちんと認識させた上で抱き締めたら?
手は握れるから、何とかなるかもしれない
はっきり言ってかなり不安ではあるけれど
それはちょっとした俺の賭けでもあった
「かずくん」
かずくんが、俯いた顔を上げる
泣いた顔が痛々しい
「抱き締めて…いいかな」
そっとかずくんの手を握る
ー…上手くいきますように
