
今日も明日も
第64章 見えない鎖 part Ⅴ
「かずくん、セットしてくれたの?」
「まーくんが帰って来るって分かったから…
勝手にごめんなさい」
電話の効果がこんなとこに表れるとは嬉しい誤算だった
「何で謝るの、凄く助かるし嬉しいよ」
「…嬉しい?」
かずくんはこんな時も不思議そうな顔をする
「うん!すごーく嬉しい」
だからちょっと大袈裟に喜んで見せて、分かるようにしてあげたら
「…良かったです」
顔を赤くしたかずくんが、少しだけ笑ってくれた
“笑顔“ にはまだ遠いけど、初めて俺に向けて笑ってくれた
「笑った!」
思わずあまりの嬉しさにかずくんの手を握ったら
「あの…っ」
更に耳まで真っ赤に染めたかずくんが戸惑ったように俺を見つめていて
…その顔がやたらと可愛く見えてしまった俺は
自然とかずくんを抱き締めていた
「や…っ!!」
だけど次の瞬間、どん、と突き飛ばされた俺は
床に尻餅をついた
「かずくん…?」
「あ…、ご、ごめんなさい…っ」
まさかの行動に目を丸くする俺に、怯えた目をするかずくん
ガタガタと震え出す体
茫然とする俺に、かずくんが必死に震えを抑えようと自分で自分の体を抱き締めた
