
今日も明日も
第61章 見えない鎖 part Ⅳ
「ごめんね、遅くなって。…明日からはかずくんと連絡つくようにするから」
「え?」
かずくんの腕を取って立たせ、ふらつく体を支えながらキッチンに向かった
そう、カメラだけを買うはずだったけど
やっぱり残る後ろめたさに
かずくんに極シンプルな携帯も一緒に契約してきたんだ
電話帳には俺の番号しか入っていない
かずくんがどこまで使いこなせるか分からない
もしかしたら、周りと同じように使いこなすかも知れない
だけどそこはどうにも判断出来ないから、“とりあえずの“ と言い訳を作った
「これ、かずくんにあげる」
二つ折りのそれを掌に乗せる
乗せられたそれを見て、かずくんは「携帯…」と小さく呟いた
「うん。これで俺と連絡取れるからね」
「あの…使い方……」
かずくんが戸惑ったように俯く
「ああ、分からない?」
半分は想定内だから、もう驚かない
「ごめんなさい…」
それなのに、泣きそうになるとか
かずくんは本当に “世間“ から離れている
