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今日も明日も

第61章 見えない鎖 part Ⅳ


買い物をしたおかげでいつもよりだいぶ遅くなってしまった

かずくんに連絡しようにも携帯はないし、固定電話もないし 伝言を頼める人もいない


最後は走って、アパートの玄関を開けると

「かず…くん」

小さく丸まって、目の前にかずくんが眠っていた

泣いた痕の残る横顔がツラい

きっとかずくんは遅い俺を心配して、…だけど約束したから外にも行けなくて、ここで待ってたんだ

…どれくらい待ったんだろう


「…かずくん、かずくん…」

背中を撫で、覚醒を促すと

割と早くに目を開けたかずくんは、俺の姿を捉えた途端に

またポロポロと涙を流し始めた


「まーくん…良かった…」

「え?」

「帰ってきてくれた」

そう言って涙を拭う事もしないで泣き続けるかずくんに胸が痛くなった


「かずくん…ずっと待ってたの?」

こんな暗い廊下で
玄関を見つめて

かずくんが小さく首を振る

「鳥さん、見てました。後、ご飯も食べましたよ」

答えになってるのかなってないのか

だけどそれを深追いする気にはなれなかった

かずくんがここにいたのは、決まった時間に俺が帰って来なかったからだと言うのは分かってたから

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