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今日も明日も

第57章 見えない鎖 part Ⅰ


「座ってるだけでいいからね」

そう伝え、彼が頷いたのを確認してから髪を濡らしていく

しっかり洗ってあげたいけど、まだそれは厳しいだろうと判断し、手早く髪を洗った


「タオルだと痛いと思うから…」

その提案は親切心からだった

ボディソープをタオルで泡立たせてから、それを掌に移して体を優しく洗えば痛くないだろうって思うから


「…っ」

だけど体を掌が滑る度に彼が息を詰め、時々ビクリと体が跳ねる

「あ、ごめんね、擽ったい?」

「いえ…っ」

早く終わらせて上げようと掌を滑らせ、胸に触れた途端

「ひあ……っ」

首を仰け反らせた彼が、喘いだ

…そう、確かに甘い声を上げた


「あ、ご…ごめんっ」

その声がやたらと艶かしくて、それまで何とも思わなかったこの行為が急に恥ずかしくなってしまう

ってか、何で俺同じ男にこんなにドキドキしてんだよ

何かヤバい
色々とヤバい

彼の体を見ないように
声を聞かないように

俺は必死に冷静を装って、大急ぎで彼の体を洗い上げた





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