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プリンス×プリンセス

第8章 分かりにくい優しさ

不意にディオチェスター王子がこちらを振り返り

「え?」

差し出された右手を、戸惑って見つめる。

右手を見つめたまま動けないでいると、思ってもみなかった言葉をかけられた。

「手を引いてやる」

「だっ…大丈夫です!」

首を振って申し出を断ると、ディオチェスター王子は眉をひそめて

「お前は、眼鏡がなくても見えるのか?」

え…?

ディオチェスター王子の言った意味を理解するまでに時間がかかり…

分かった瞬間、何て返したらいいのか分からなくなった。

そんな俺に、ディオチェスター王子はニヤリと笑うと

「伊達か。まさか変装のつもりだったのか?」

面白がるように楽しそうに言うから…

「気付いて…?」

俺が姉上の扮装をしてるって、認めるしかないだろ?

「俺を誰だと思っている」

鼻先で笑われて、多少の悔しさと、ディオチェスター王子の鋭さに舌を巻いた。

いつも一緒にいるカムリでさえ騙せたのに。

ふぅ…とため息をついた。

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