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プリンス×プリンセス

第50章 尊い人

「頼んでもいないのに」

冷たい、突き放すような言い方に、何だか悲しくなる。

グレイスは俺を見ると、ふぅ…と息をつき

「それでも私のためにしたのなら、私にも責任があります」

申し訳ありません、と再び頭を下げた。

「そんな…気にやむ必要はありませんよ?」

どう話したら納得してくれるんだろう?

俺は…俺も姉上も、もう気にしていない。

頭を下げる必要なんかないんだ。

グレイスの手をとると、両手で握り締めた。

グレイスは驚いて頭を上げて…

俺を見てから、握られた手に目を落として…小さく笑った。

「貴女はお優しい方ですね」

「そんな事は…」

もう済んだ話だから。

そして誰も傷付いていないから。

だから許せるんだ。

なのに

「いえ。優しすぎます」

……何だろう。

グレイスの言い方は妙に社交的で、言葉の奥底で怒られてる気がする。

不意に音楽が途切れた。

あ…ワルツが終わったのか。

ディオを見れば、次にダンスを踊りたいと名乗りをあげる相手から逃げ出せなくなっていた。

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