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0時の鐘が鳴る前に

第3章 キラキラ、ふわふわ

「何泣きそうな顔してんだよ」

振り返った彼は手を繋いでいない方の手で、私の頭をあやすように撫でる。


「退屈してたから。気まぐれ」


……ほら、優しい。


なんで?出会ってまだ一週間なのに。

なんで?私にしかメリット無いのに。

「…ありがとうごさいます」

そう言った自分の声が少し震えていて、泣きそうになっていた事を実感する。

それをどうにか耐えながら、街灯のきらめく街を歩いて

駅に着くと同時に、丁度来た電車に2人で慌てて駆け込む。

「…っセーフ!」

肩で息をしながら笑い合うのも楽しくて

まぁもうなんでもいいや、って私はぐるぐるになった思考を放棄した。

「家に送るところまでがデートだから。」

そう言って彼は私の手を引いて歩き出す。

やだな、もうすぐ終わっちゃうんだ。

彼の広い背中を見つめながら、そんなことを思わずにはいられない。

また行きたい、けど…迷惑だろうな。

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