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優しいキスをして

第6章 秘密の恋人たち

「もしかして、会議のあとデートですか♪?」
……う、菜月ちゃんするどい。
「……っ」
思わず黙ってしまったあたしにすかさず菜月ちゃんが追い討ちをかけるように言った。
「あ!図星だぁ!」
「……なんで、……わかるの//?」
あたしの顔はますます熱くなった。
「だって、疲れてるはずなのになんかウキウキしてるし、最近ホントにキレイになりましたもん!」
「そんなこと言っても何も出ないよ?」
あたしは必死に平静を装う。
「そんなんじゃないですって!どんな人なんですか?」
「いや、どんなって……」
……まさか、北澤さんだとは、死んでも言えない。んー……
「……優しい人だよ。かっこいいし」
「いいなー♪うらやましー♪今度写メ見せてくださいよ!」
「えー?まあ、そのうちねー……」
あたしは返事を濁す。
……ごめんよ、菜月ちゃん。本当は教えられないの。
「絶対ですよ?じゃあ、お疲れさまでーす♪」
「お疲れ」
あたしは笑って誤魔化すと駐車場でお互いの車の前で別れた。
……あたしたち、いつになったら普通に付き合えるんだろ。
あたしは深くため息すると車に乗り込み、エンジンをかけた。





ようやく本店に着いて車を停めると、ちょうど目の前をともくんの車が通っていくのが見えた。
あたしの車のすぐ斜め前にともくんは駐車した。
「お疲れさま」
あたしは微笑んで言った。
……偶然なんだから、一緒にいたっていいよね?
「お疲れ。今反対側から入っていくの見えたよ」
ともくんは微笑んで返してくれた。
そのまま一緒に歩いていく。
「片づけ大変でさ、ちょっと遅れちゃった」
「まあ、一年生の子一人残して出れないしな。うちもやっとこさー片づけたよ。あー疲れた」
そう言ってともくんは首を左右に傾けてポキポキ鳴らした。
「やっぱりともくんのとこも忙しかったんだ?」
そこでいきなりともくんは少し屈んで声を潜めた。
「ここで『ともくん』はだめだってっ」
……あっ。そうだった。
「……ごめん」
「いいよ。早く行こ」
そう言って微笑むとともくんはあたしの手を握った。
「……北澤さん、手も、まずくない?」
「ん?」
ともくんはあたしと繋いだ手を見ると、慌てて離した。
「俺も人のこと言えねぇな」
ともくんは頬を少し染めて苦笑いした。

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