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優しいキスをして

第6章 秘密の恋人たち

『あーそうかい。じゃあまたあとでな』
「はい、お疲れさまでーす」
あたしはお店の子機を持ったまま、子機を見つめた。
……大沢さん、自分からけしかけといてなんなの?今日はなんかあるとか……。
「どうしたんですか?」
横で一緒に遅い昼ごはんを食べていた菜月ちゃんが思案顔で問う。
「あー……会議1時間遅れでやるって。だからあたしもこれ食べたら締めと片づけ手伝うよ」
あたしがにっこり笑って言うと菜月ちゃんの顔がぱあーっと明るくなった。
「ホントですかっ?助かりますぅー♪あたし一人で全部やんなきゃって思ってたんでっ。よかったぁ♪」
あたしは苦笑すると残りのハンバーガーを口に放り込んで立ち上がった。
「菜月ちゃん、ゆっくり食べてな。今日疲れたでしょ?あたしとりあえず先にタオル集めて回しとくから。そのあとあたしが一服して、それからでいいからさ」
「いえ、いいですよ!あたしももう片づけます!」
菜月ちゃんは慌てて立ち上がって自分の食べかけのハンバーガーを置いた。
あたしは菜月ちゃんの鼻の頭をつんと指で押して言う。
「いいから、先輩の言うことは聞いときなさい?本当は今日、シャンプーしまくって腰痛いでしょ?」
菜月ちゃんは一瞬びっくりした顔をすると、申し訳なさそうに椅子に座った。
「すいませーん……ありがとうございますぅ」
あたしはまたにっこり微笑むとフロアに出ていき、ワゴンやシャンプー台周辺に大量に積んであるタオルから籠に集めた。
……ともくんも、今日は大変だったかなぁ。会議終わったら二人でまったりしよーっと♪
あたしはタオルを洗濯機にかけ、バックルームに戻って一服する。その頃には菜月ちゃんも少し復活していた。二人で片づけと締めをテキパキ終わらせると、お店を出た。
…………。
「須藤さん、もしかして……特定の彼氏できました?」
菜月ちゃんがお店の鍵をかけながら言った。
……特定のって……、菜月ちゃん直球だなぁ。確かに前のあたしの男関係は特定とは言えないけど……
「うん、できたけど……なんで?」
「やっぱりー!?前とホント雰囲気変わりましたもん!今の彼氏さんのこと、大好きでしょ?」
興奮気味に言う菜月ちゃんの言葉に、あたしは顔がちょっと熱くなった。
「え?そう?//まあ、……好きだけど//」

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