
優しいキスをして
第6章 秘密の恋人たち
「お疲れさまでしたーっ」
剣城さんの号令と共に会議は終了した。
……もう、11時過ぎだ。
あたしは携帯の画面で時間を確認すると、荷物をまとめて椅子を長机の下にしまった。
「お疲れさまで……」
「北澤くんと須藤は残って。来月の成人式の件でもう少し話したいから」
あたしの声を遮るように、磐田さんが言った。
まだ、10人近くの人が残って雑談している中であるにもかかわらず、磐田さんの声はあたしの耳に突き刺さるように聞こえた。
特別怒っているような声ではなかったが、どこか冷たい、突き放すような感じがした。
磐田さんに言われてともくんと二人して少し顔を見合わせた。
……あたしはわかるけど、ともくんはなんで?
あたしの中で何かが訴えていた。
何か、……嫌な予感がする…………。
あたしたち以外の店長やチーフたちは席を立ち、先生とマネージャーの磐田さん、竹井さんが残った。
磐田さんはあたしを育てたと言っても過言ではない人で、前々の店舗の店長で直属の上司だった人だった。1年目から磐田さんの元でお世話になり、技術的にも上司としても、同じ女性としても尊敬している。
磐田さんはとても神妙な表情で俯いていた。
……磐田さん。何を言おうとしてるんですか?
…………。
先生が口火を切った。
「ごめんなさいね、さっきのは嘘なのよ」
あたしは目を見開いた。
すごく、嫌な予感がする……。背中にひとりでに汗が流れた。
ともくんを横目で見ると、ともくんは特に動揺はしていないようだった。
「磐田さん、あなたから話してちょうだい」
「……はい」
磐田さんは立ち上がった。
座ったままのあたしたちを交互に見つめ、真剣な表情で言った。
「どっちがけしかけたの?」
……けしかけた?
あたしは思わず言ってしまった。
「え?え?……一体なんのこと言ってるんですか?」
「須藤からなの?」
「……あたしから?」
磐田さんは、一度目を閉じてゆっくり目を開けた。そして静かに、だがはっきり言った。
「…………二人は、いつから付き合ってるの?」
「…………っ」
……なんで、磐田さんが……カマかけてるだけ?それとも……
あたしはなるべく普通に見えるように平静を装おった。
「……なんのことですか?」
ともくんは穏やかな表情で笑顔さえ浮かべて言った。
……ともくんは、上手く誤魔化す気だ。
「北澤くんはあくまでしらを切る気?」
剣城さんの号令と共に会議は終了した。
……もう、11時過ぎだ。
あたしは携帯の画面で時間を確認すると、荷物をまとめて椅子を長机の下にしまった。
「お疲れさまで……」
「北澤くんと須藤は残って。来月の成人式の件でもう少し話したいから」
あたしの声を遮るように、磐田さんが言った。
まだ、10人近くの人が残って雑談している中であるにもかかわらず、磐田さんの声はあたしの耳に突き刺さるように聞こえた。
特別怒っているような声ではなかったが、どこか冷たい、突き放すような感じがした。
磐田さんに言われてともくんと二人して少し顔を見合わせた。
……あたしはわかるけど、ともくんはなんで?
あたしの中で何かが訴えていた。
何か、……嫌な予感がする…………。
あたしたち以外の店長やチーフたちは席を立ち、先生とマネージャーの磐田さん、竹井さんが残った。
磐田さんはあたしを育てたと言っても過言ではない人で、前々の店舗の店長で直属の上司だった人だった。1年目から磐田さんの元でお世話になり、技術的にも上司としても、同じ女性としても尊敬している。
磐田さんはとても神妙な表情で俯いていた。
……磐田さん。何を言おうとしてるんですか?
…………。
先生が口火を切った。
「ごめんなさいね、さっきのは嘘なのよ」
あたしは目を見開いた。
すごく、嫌な予感がする……。背中にひとりでに汗が流れた。
ともくんを横目で見ると、ともくんは特に動揺はしていないようだった。
「磐田さん、あなたから話してちょうだい」
「……はい」
磐田さんは立ち上がった。
座ったままのあたしたちを交互に見つめ、真剣な表情で言った。
「どっちがけしかけたの?」
……けしかけた?
あたしは思わず言ってしまった。
「え?え?……一体なんのこと言ってるんですか?」
「須藤からなの?」
「……あたしから?」
磐田さんは、一度目を閉じてゆっくり目を開けた。そして静かに、だがはっきり言った。
「…………二人は、いつから付き合ってるの?」
「…………っ」
……なんで、磐田さんが……カマかけてるだけ?それとも……
あたしはなるべく普通に見えるように平静を装おった。
「……なんのことですか?」
ともくんは穏やかな表情で笑顔さえ浮かべて言った。
……ともくんは、上手く誤魔化す気だ。
「北澤くんはあくまでしらを切る気?」
