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アクマにアソコを貸しました

第10章 イカ?いいえ、津島です

「あ、そっか。梓穏大丈夫だよ」
肩を竦めて微笑んだ次の瞬間、真顔で手元のナイフを見つめた真赭。

つい今しがたまで周りの景色を映していた刃からみるみる輝きが失せていく。錆とも違うダークグレーの小さな点がナイフにプツプツと浮き始め、あっという間に覆い尽くしてしまった。

この間僅か数秒。木々の隙間から斜めに射す夕日が真赭を照らす。さっきまでイケメンに後光がさしているかのように感じたその光景が、今は美しくも禍々しく感じる。

萌々ちゃんは何故か色を変え出した手中のナイフを凝視していたが、真赭側から風に溶けるように斜め上へ消えていく時になってから漸く慌てて手を離した。いや、離そうとした。

消えていくナイフの粒子が萌々ちゃんの手の中にある部分へ及んだ瞬間、

バンッッ!!

と華奢な身体が後ろへ吹っ飛んだ。

「萌々ちゃんっ!?」

彼女が握っていた部分は持っていた者がいなくなった為に地面に向かって落ちていったが、地表に届く前に全てが風に溶けていった。

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