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アクマにアソコを貸しました

第10章 イカ?いいえ、津島です

その日の午後。休憩がてら自販機を目指していたのに、なぜだかビル内を遠回りしたくなってしまった。いつもなら自販機に行く時には通らない、人気の少ない廊下を歩いていた。


「――だから、違うんです!」
ゲッ!まさかこんなところで修羅場!?わざわざ修羅場なんぞに吸い寄せられる不幸体質になっちまったのか。聞きたくもないのに興奮した女の声は止まる事なく、気になる単語で私の足を引き止めた。

「ストーカーなんです!」
えっ、ストーカー!?
「私が好きなのは桐原さんだけなんです」
ほうほう、多分そこにいるキリハラさんが好きなのね?
「ストーカーが…怖いんです」
そりゃ怖いわよね!
「ストーカーから守ってください」
守りたいのは山々だろうけどね〜え、私?決して盗み聞きではないから。ちょっとびっくりして足止めされただけだからね!

「守るって…どうすればいいの?俺より上司に相談した方が良くない?」
「ストーカーに“俺の彼女に手を出すな”って言ってくれれば諦めると思うんです」
「そういう嘘ってさ、かえってややこしくなるよね」

ふいに静かになったので慌てて立ち去ろうとしたのに一足遅かった。

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