テキストサイズ

アクマにアソコを貸しました

第10章 イカ?いいえ、津島です

すれ違う人が私にだけ「お疲れ様」と挨拶してくれるのを見ると、ケィシは既に気配を消して周りに気づかれなくしているのだろう。

廊下の角を曲がった瞬間、ダンッと壁に押し付けられて何が何だかわからないうちにケィシの顔が間近にあった。

「脇腹が痛かったぞ?」

いつもより低いトーンの声に、喉がひきつりゴクリと唾を飲むのがやっとだった。

「…け」
「け?」
「ケィシがエロガッパなのが悪いんでしょ。

あ…あのこの後ろ姿をじっと見たりして」


私が妬きもちをやいていた事を知ってたクセに、驚いたように一瞬目を見開いてからニヤリという音がピッタリなほど目を細めた。

「安心しろ梓穏。特別なのはお前だけだ」

「!!」
ドキドキし過ぎて近づいてくるケィシの顔を見ていられない。思わず顔を背けるとケィシに掴まれて磔にされた手首が目に入った。

ケィシは自分の手を、ゆっくりと私の手首から手のひらへ滑らせて恋人繋ぎにした。

「梓穏」

耳元で囁かれて身体が大きく跳ねる。

「人間の綺麗な女など、魔界で見飽きているレベルだと言っただろう?だからお前みたいな珍味の方がいい」

……このフロアにお祓いできる人はいませんか

ストーリーメニュー

TOPTOPへ