テキストサイズ

言ノ葉

第1章 生き続ける

えみは愛してる。という言葉を言われるのが嫌いだった。
言葉なんて上辺だけ。いくらでも言える。そうやってどれだけの男に騙されてきたか。

ほら、またその言葉は言う男が現れた。
私は気持ち良くしてくれて、暇な時間を潰してくれる相手になってくれればそれでいいのに。
愛してると言ったからなに?私も言えばいいの?
その言葉に対して同じようにオウム返しすればいいの?それで貴方は満足するの?

…一度エッチをしただけで、愛してると。
男なんて気持ち良くなればその場の勢いで言ってくる。
私が本気になればなったですぐに連絡無くなるくせに。

…本当に、心から愛してるのならばそんなに簡単に言わないで。
愛してるなんて言葉はそんな軽い言葉じゃない。
その言葉の中には色んな気持ちがあるの。
ただの好きという感情だけじゃない色んな気持ちが…




…東北の片田舎にえみの自宅はあった。
家族は母と兄。
父はえみが小学生の頃に自殺した。
会社を経営していたが、うまくいかず、それに耐え切れず首を吊った。
母はそれをなんとか立て直し、今は軌道にのってきている。
兄は所謂ニート。
コンピューター関係の専門学校に通っていたが、人間関係がうまく行かずに三ヶ月で退職して以来、家に引きこもっている。兄が部屋で何をしているかはえみも知らなかったが、おそらくゲームかパソコンだろう。
それ以上の事はえみも興味が無かったし、関わりたくないとも思っていた。

地元でも有名な進学校に進んだえみは悩んでいた。
やりたい事もなく、鬱屈した日々を過ごしていた。可愛くもなく、相当太っていたえみは恋愛など程遠く、彼氏など出来るはずもなかった。
それが鬱屈した日々に拍車をかけていたのかもしれない。
表面上では男なんて…とは言っていたが、やはりそこは年頃の女子。人並みの恋愛に憧れはあった。



いつもの通学路。
自転車を漕ぐその足どりは重い。
「今日は天気がいいから幸せな気分になるね。」
朝の何気ない母との会話が余計にえみのその足を重くさせた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ