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花火の秘密

第3章 すばるくんとの秘密

「…まるは?」

「ここで食べて待ってる。」

やっぱり動かないまるちゃんを見て俺の優越感はさらに膨らんでいく。

さっきまでの不安で憂鬱な気持ちは完全に潰された。

「…はよ戻ってくるから!!」

俺のどや顔にも似ている笑顔にすばるくんが世にも恐ろしい顔を残して走っていった。

長い間一緒にいると慣れてしまうものだと自分が強くなったことをあらためて実感した瞬間だった。

「たつよしー。食欲ないんはなんかしんどいん?」

長い列の後ろにすばるくんが並んだあと、まるちゃんは動かしていた箸を一旦止めて俺を見た。

「…大丈夫やで。」

「ほんまですか?たつよしの食欲がないんは心配になりますよ?」

体の角度を少し俺の方へ変えてじっと見つめる。

この空間はなんだろう?

息が詰まって心臓が破裂しそうだ。

「…口移しなら食べてくれます?」

「…口移し!?」

あまりの急展開に目が落っこちるかと思った。

「えっ、いや、待ってや!!まるちゃん、それはあかんって。それはさすがにすば…。」

ふと浮かんできた名前に疑問を感じた。

まるちゃんとすばるくんの関係は?

今まで二人はてっきり恋人いう関係だと思っていたが違うのか?それともまるちゃんはすばるくんに嫌気が挿している?

これは諦めずに思い続けてきた俺が形勢逆転を成し遂げる舞台ができたかも知れない!!

「…ま、まるちゃん。」

「…ん?」

「口……移し…」

「まーるー!!たこ焼買うてきたでー!!」

爆弾が破裂したように聞こえたすばるくんの声に「して」という二言だけが唾と共に流されてしまった。

「渋やん早かったな!!あんな並んでたのに。」

「運良く作り置きが出来てすぐやったから。ほら、食おうや?大倉も食えよ!!」

息を切らして走ってきたすばるくんが上から笑っていない目で俺をにらむ。小さいおっさんの癖に。

「せや、たこ焼やったら食えるんちゃう?」

「…そうかもな。」

さすがにこんな目で睨むすばるくんの前でまるちゃんの口移しがいいなんて言えるほど心臓に剛毛が生えたような精神力はしていない。

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