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花火の秘密

第2章 りんご飴の秘密

射的の岸についた俺らは店員さんを困らせていた。

気迫の強い男とどうもそれに完敗しているひ弱な男が二人無言で銃とにらめっこしているのだから。

「…何回…しましょうか?」

「三回でお願いします。」

「おつり…100円です。」

いかにも修羅場な空気が漂うが忘れてはいけないのがこれはあくまで祭りの遊び事であること。

「ここに指をかけないように注意してください…。」

「わかりました。」

ずいぶんと商売のやりにくそうなこと。

俺もそうさせてる一人なのだが他人事のように思える。

「俺、あれ狙うわ。」

銃口を向けた先はまたこのオーラに似合わない大きなぬいぐるみ。

こんなもの倒れるわけがない。きっと素人にはわからないんだろう。

何も言わない俺はなにか言いたげな店員さんに助けを求めるように見られたがあえて無視した。

どっしりと構えたその可愛い顔をした悪魔はひなが放つ弾丸の威力を意図も簡単に吸収して平然とひなを見下ろした。

「残念やな。んなら俺の番。」

あえて俺は手前にある小さなお菓子の箱を狙った。

大きさはずいぶんと小さいがこれだけ近ければ問題ない。

よく狙いを定めて空を切った玉は箱をかこんっと音をならして後ろへと落とした。

「一個目、ゲットー。」

店員さんに渡されたお菓子をきれいなどや顔で見せびらかしてやった。

すると何かの薬を誤って飲んでしまったかのように顔がみるみる怖くなる。

俺はもうどうってことないが店員さんが生きたここちがしていないみたいだ。

お気の毒に。

「…んなら次はあれや。」

少しハードルを下げてゲームのソフトを指差した。

お菓子の箱に比べてターゲットの大きさは大きいものの距離はそこそこある。

片目で焦点を当ててテーブルに肘を固定してプロさながらのポーズを決めればゆっくり引き金を引いた。

その球は予想外にも軽い箱の上部を押した。

しかしその景品がひなの手元に来ることはなかった。

「なんでや!!倒れたやんけ!」

「土台の後ろにまで落ちてないからしゃあない。そうゆうルールやから。あんま怒ったら店員さん困るやろ。」

申し訳なさそうに倒れた箱を元に戻す店員さんに意識的に笑顔を向けた。

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