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花火の秘密

第2章 りんご飴の秘密

ようやくのことで俺たちは広場に向かう波に乗った。

「腹へったなぁ。」

「何があるんやろ。なんか珍しいもんないんかな。」

和気あいあいと進む一行。

たくさんの人の中じゃ俺も、ひなも、メンバーもただの一人の客でしかない。

そんなちっぽけな客の一人にいちいち目が泳ぐ。

「もうすぐ盆踊り始まりますね。」

「盆踊りなんてよう入っていかんわ。」

「まるちゃんやから入っていけるんやろ。」

こんなはずじゃない。こんな一人取り残されるようなん俺やない。

その気持ちとは裏腹に何故かひなから離れていく。

決して避けてるわけじゃないのだが。

「わかってくれへんー。」

「…急にどうしたん?」

俺のすぐ横を通り抜けて大倉のもとへどっくんが押し寄せてきた。

わざわざ俺やなくて大倉に向かうどっくんを無意識に恨む。

俺の目の前で大倉と話していたひなを引き離してしゃべるのが原因でひなは後ろに姿を消したからだ。

さっきからひなの行動ばかりが気になってあまり楽しめていないように思う。

小さくため息を落とすと、それを拾うようにひなの声が耳をくすぐった。

「俺はヨコと射的対決するから。勝ったら射的 のお金とリンゴ飴をおごってもらう。この勝負 は譲られへん!!」

思わず振り替えれば予想以上に真剣なおもむきで正直言わなきゃよかったと後悔した。意地でも俺に金を払わせる気だ。

気分の悪い俺なんか見ていないようで、じゃ。とヤスに声をかければ俺の肩をぽんっと叩いて屋台へと波から外れていった。

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