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やがてそっと離れていった戒斗に、彼女は目を見開きっぱなしでいた。

『あの‥今‥その…』

「何だ？」

『ぁ…、いえ』

口元を覆っている彼女に、戒斗は意地悪そうに口角を上げ、フンッと鼻で笑って何処か満足そうにして彼女を見ていた。
──彼女は不思議だった。
男性恐怖症であるはずの自分が、男性である戒斗に触れられても拒絶しなかったことに…。

「そう言えばお前、仕事はいいのか？」

『今日は夕方までオフなんです‥けど、どうしてそんなこと…─』

「何となくだ…格好からしてそんな気がしたからな」

『仕事心配してくださったんですね…ありがとう御座います』

「別にそういうつもりで言った訳じゃない！ただ、こんなことをしに来るくらいなら仕事をしろと言いたかったんだが、ないなら何も言えないだろう…」

やたらとむきになっていう戒斗に、彼女は思わずクスッと小さく笑ってしまう。
そんな彼女に戒斗はまるで子供の様にムッとして睨み付けたが、その表情に何故か笑みを零す彼女の姿がそこにはあった…──。