
一万回目のプロポーズ
第12章 思い出
端まで着くと、本当にあたしたち二人だけだった
そりゃあそうか
すぐ隣は、掃除用具庫だもんね
「場所、最悪だな」
『そんなことないよ、ちゃんと海見えるし』
「そっか」
俊司は笑いながら、地面に片膝をついた
あたしは驚いたけれど、俊司は笑顔のまま
何となく顔を赤らめて
あたしの左手を取った
「明奈」
あたしは、何となく場の空気が読めた
だから俊司に合わせて
『はあい?』とわざとらしく返事をする
俊司はゴホンと咳ばらいしてから、あたしの目を見てくれた
「結婚、しよ」
指輪が俊司の手によって、あたしの小指を通った
『喜んで///』
そのまま俊司の手を掴んで
俊司を立たせた
「予行演習だな」
『だね///』
人の目を気にする必要も、ない
俊司の顔が近づいてくると
あたしも自然と、顔を上げた
…チュ
『…ぅわぁ…恥ずかし…///』
「いまさらだな」
二人して笑って
あたしたちはバスへと戻った
