
願わくば、いつまでもこのままで
第8章 変化
風が涼しい夜道を歩いていると、いつのまにかよく知っている道に出ていた。
少し、嫌な予感がする。
前を歩いていた佐倉田が急に止まり、俺は危うくぶつかりそうになった。
「っとと……」
佐倉田は俺の腕を引いて視線を向けられた。
「着いたよ、陽くん
ここが私の家です」
「えっ……ここ?」
俺の目の前にはあの兄貴夫婦が住んでいるマンションがあった。
それを指差したが、
「じゃなくて、こっちっ」
といって指はその隣の少し寂れた小さなアパートに向けられた。
「あ、そっち?」
「当たり前でしょ!
独り暮らしの大学生なんだから、そんなに贅沢できないよ〜」
そうっすよね……と小さく呟いた。
