
願わくば、いつまでもこのままで
第5章 市民プール
「ど、どういたしまして」
陽君は目元から下を両手でおおった。
でも隠しきれずにいる指の隙間からはほんのり赤くなった頬が見れた。
あ、可愛い。
照れてるんだ。
つい私がクスッと笑うと
陽君の頬はもっと赤く染まった。
やだ、なんか面白くなってきちゃった。
「クスッ」
「っ……」
「クスクスッ…」
「っ……、ああもう比奈ちゃんこっち見んな!」
陽君は両腕で頭を隠し、
立てていた足の間に顔を埋めた。
これで完全に見えなくなってしまったわけだ。
「ちょっと、陽君ー?」
問いかけてみたものの、
拗ねているのだろうか、返事は帰ってこない。
私が、やり過ぎた。
からかい過ぎちゃったんだ。
「あの、陽君……
からかって、ごめんね?」
「…………比奈ちゃんが、いけないんだからな」
ぼそっと声が聴こえたかと思うと
バッと顔をあげた。
「これでもくらえ!」
「えっな、何!?」
思わず少し身構え、目をつぶった。
ピピッ…カシャ
聴こえてきたのはシャッター音。
目を開けると、私の前で陽君は自分の携帯を構えていた。
「え……、今もしかして…」
「クスッ
そ、比奈ちゃんの写メ撮ったんだよ」
「え……ええ!?」
写メって写メって……ちょっ、やだやだ!
「陽君だめ!
今撮ったの消して!!」
携帯を奪おうと飛びかかると、陽君は私の手をヒョイとかわした。
「なんで?可愛く撮れてるよ?」
「そういう問題じゃなーい!」
何度か手を伸ばし飛びかかるも、携帯にはいっこうに届かず。
「はい、もう保存しましたー」
そう言って携帯を閉じ、
自分のかばんにサッとしまった。
「そんな、ひどいよー!」
「先にしてきたのはそっちだろ!?」
ちょっと睨み合ったら、2人して笑い出した。
こんなに陽君と言い合ったのは初めてだ。
