
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
暑い夏も盛りが過ぎ、真昼はまだまだうだるような暑熱が続いていたものの、朝夕に吹く風には、わずかに初秋の気配が潜むようになった。人は誰しも忙しない日常に気を取られ、季節のうつろいに気を払いなどしない。ある朝、急に空気が冷たくなったように感じ、突然に秋が来たのだと思うけれど、実のところ、季節は知らない中にゆっくりと移り変わっていっているのだ。
ただ、人間が普段はその変化に眼を向けないだけである。漢陽の人々もそんな些細な変化に、秋の訪れを何とはなしに感じ始める季節になっていた。
その日、留花はいつものように柳家の屋敷から帰る途中であった。町でも最も賑わう四ツ辻に高札が立っている。どうやら、政府の公的な文書が張り出しあるらしい。民に向けてのお触れが発令された場合、こうして町の各所にある掲示板に張り出されるのが慣例である。
ただ、人間が普段はその変化に眼を向けないだけである。漢陽の人々もそんな些細な変化に、秋の訪れを何とはなしに感じ始める季節になっていた。
その日、留花はいつものように柳家の屋敷から帰る途中であった。町でも最も賑わう四ツ辻に高札が立っている。どうやら、政府の公的な文書が張り出しあるらしい。民に向けてのお触れが発令された場合、こうして町の各所にある掲示板に張り出されるのが慣例である。
