テキストサイズ

手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

「良いのだ。あまりお待たせしては、また父上が苛々とされるだろう。行こ(カ)う(ジヤ)」
 世子は八月の風にかすかに揺れる黄色い花を眼を細めて見つめながら、静かに言った。
 この日、朝鮮第二十一代国王英祖の次男にして時の王世子であった通称寛允君こと李愃が国王英祖への謀反の疑いありと義禁府の兵に身柄を拘束された。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ