
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
彼が二十七年の生涯でただ一人、心から愛した女が好きだと言った花。思えば、留花も我が身も肉親との縁薄い生まれだったと今更ながらに思わずにはいられない。
世子の両親はいまだに健在ではあるが、父との距離は同じ王城内に住まいながらも天地よりも遠く離れ、生母とは宮中のしきたりゆえに思うようには逢えない。
そんな肉親の愛に飢えていた自分たちがめぐり逢い、恋に落ちたのもやはり偶然のように見えて必然だったのか。
「どうかなさいましたか?」
丁重に訊ねてくるのに、世子は薄く笑んだ。
「女郎花が咲いているな」
「はっ?」
いきなりの科白に、隊長は眼を見開いている。
世子の両親はいまだに健在ではあるが、父との距離は同じ王城内に住まいながらも天地よりも遠く離れ、生母とは宮中のしきたりゆえに思うようには逢えない。
そんな肉親の愛に飢えていた自分たちがめぐり逢い、恋に落ちたのもやはり偶然のように見えて必然だったのか。
「どうかなさいましたか?」
丁重に訊ねてくるのに、世子は薄く笑んだ。
「女郎花が咲いているな」
「はっ?」
いきなりの科白に、隊長は眼を見開いている。
