
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
どうやら、新しい王妃の書いた筋書は上々のようだ。世子である自分に父王への叛意があるとし、捕らえさせる。それから―、それから自分はどうなるのだろう。
世子は大勢の兵たちに囲まれたまま、引き立てられるようにして自室を出た。住まう殿舎を出て広い庭園に差しかかった時、庭園を貫く小道沿いにひっそりと咲く女郎花を見つけた。
世子の歩みが止まり、傍らの兵が訝しげに彼を見る。例の顔を見たことがある義禁府の兵であった。どうやら、この中年の男はこの兵たちの責任者格に当たるらしい。
女郎花、留花の想い出の花だ。三歳でふた親を失った留花にとっては両親とのたった一つの記憶を象徴する花だと聞いた。
世子は大勢の兵たちに囲まれたまま、引き立てられるようにして自室を出た。住まう殿舎を出て広い庭園に差しかかった時、庭園を貫く小道沿いにひっそりと咲く女郎花を見つけた。
世子の歩みが止まり、傍らの兵が訝しげに彼を見る。例の顔を見たことがある義禁府の兵であった。どうやら、この中年の男はこの兵たちの責任者格に当たるらしい。
女郎花、留花の想い出の花だ。三歳でふた親を失った留花にとっては両親とのたった一つの記憶を象徴する花だと聞いた。
