
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
そして、最も忘れられないのは、やはり留花の膝枕で聞いた子守唄であろう。
―愛しい子よ、大切な我が息子よ。一体、お前はどこから来たのだ? 幾千、幾億の宝、金銀にも勝る大切な我が子よ、きっと天がお前を授けて下されたのだ。
今でも眼を瞑り耳を澄ませば、耳奥にあの澄んだ清らかな歌声が響いてくるようだ。
あの時、彼は確かにはるかな昔―まだ幸せだった頃の子ども時代に還っていた。父との距離がまだ今ほど隔たっていない頃、あの頃は、まさか自分の存在を抹殺したいほど父に憎まれるようになるとは想像もしていなかった。
留花の膝の上は、彼の記憶に残る母の膝よりももっと温かくてやわらかだった。
留花、可哀想な娘。自分のような不運の星を背負った男を愛したばかりに、傷つけ、一人ぼっちにしてしまった。彼が二度目に訪ねていった時、祖母が死んだのだと訴えて泣いていた打ちひしがれた姿が瞼に甦る。
―愛しい子よ、大切な我が息子よ。一体、お前はどこから来たのだ? 幾千、幾億の宝、金銀にも勝る大切な我が子よ、きっと天がお前を授けて下されたのだ。
今でも眼を瞑り耳を澄ませば、耳奥にあの澄んだ清らかな歌声が響いてくるようだ。
あの時、彼は確かにはるかな昔―まだ幸せだった頃の子ども時代に還っていた。父との距離がまだ今ほど隔たっていない頃、あの頃は、まさか自分の存在を抹殺したいほど父に憎まれるようになるとは想像もしていなかった。
留花の膝の上は、彼の記憶に残る母の膝よりももっと温かくてやわらかだった。
留花、可哀想な娘。自分のような不運の星を背負った男を愛したばかりに、傷つけ、一人ぼっちにしてしまった。彼が二度目に訪ねていった時、祖母が死んだのだと訴えて泣いていた打ちひしがれた姿が瞼に甦る。
