
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
たどたどしいハングル文字で無心に書きつけていたのは何と、彼の名前と彼女自身の名前だった。あの時、世子の留花への想いは決定的なものとなった。
同時に、留花を日陰の存在(彼自身はけしてそうは認めたくはないし、留花を〝妻〟だと思っているが、世間では身分を隠してひそかに留花の許に通う彼を〝良人〟だとは思わない、むしろ、両班が初な町娘を騙して慰み者にしているとしか見ないだろう)のような扱いしかできないことが歯がゆかった。いっそのこと留花に世子であることを明かし、後宮に迎えればとも考えたこともある。
そうすれば人眼をはばからず留花にいつでも逢えるし、寵愛もできる。だが、すぐにその考えがどれほど浅はかであるかを思い知った。
野に咲く花は野で咲いているからこそ、美しい。もし散策中に気紛れに手折って持ち帰れば、すぐに色褪せ萎れてしまうだろう。留花の魅力は市井にあってこそ、生き生きとより輝くのだ。
同時に、留花を日陰の存在(彼自身はけしてそうは認めたくはないし、留花を〝妻〟だと思っているが、世間では身分を隠してひそかに留花の許に通う彼を〝良人〟だとは思わない、むしろ、両班が初な町娘を騙して慰み者にしているとしか見ないだろう)のような扱いしかできないことが歯がゆかった。いっそのこと留花に世子であることを明かし、後宮に迎えればとも考えたこともある。
そうすれば人眼をはばからず留花にいつでも逢えるし、寵愛もできる。だが、すぐにその考えがどれほど浅はかであるかを思い知った。
野に咲く花は野で咲いているからこそ、美しい。もし散策中に気紛れに手折って持ち帰れば、すぐに色褪せ萎れてしまうだろう。留花の魅力は市井にあってこそ、生き生きとより輝くのだ。
