
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
嵐の前の危うい静けさを孕んで、刻は過ぎゆく。留花との身を切るような別離を交わしてから、既に一ヵ月半が経過していた。
長い梅雨が終わり、都に夏が来た。連日の酷暑に大路をゆく都の人々もどことなく疲れたような顔でうつむきがちに通り過ぎてゆく光景が随所で見られる。蝉時雨が余計にうだるような暑さを感じさせ、室内でじっとしていても汗が滲むような油照りの日のこと。
昼過ぎ、王宮の東宮殿の自室で書見をしていた愃―世子は突如として義(ウィ)禁(グム)府(フ)の兵数人似に取り囲まれた。
「一体、これはどういうことだ!」
世子は威厳をもって鋭い声で誰何したが、兵たちは互いに顔を見合わせあうだけで何も応えようとしない。彼らがそも誰の命で世子を捕らえにきたかは聞かずとも判っていた。
そう、いつかはこの日が来ることは知っていた。だからこそ、あの女、留花に自分から別れを告げたのだ。
長い梅雨が終わり、都に夏が来た。連日の酷暑に大路をゆく都の人々もどことなく疲れたような顔でうつむきがちに通り過ぎてゆく光景が随所で見られる。蝉時雨が余計にうだるような暑さを感じさせ、室内でじっとしていても汗が滲むような油照りの日のこと。
昼過ぎ、王宮の東宮殿の自室で書見をしていた愃―世子は突如として義(ウィ)禁(グム)府(フ)の兵数人似に取り囲まれた。
「一体、これはどういうことだ!」
世子は威厳をもって鋭い声で誰何したが、兵たちは互いに顔を見合わせあうだけで何も応えようとしない。彼らがそも誰の命で世子を捕らえにきたかは聞かずとも判っていた。
そう、いつかはこの日が来ることは知っていた。だからこそ、あの女、留花に自分から別れを告げたのだ。
