
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
ムキになったように言い募る愃に、留花は首を振る。
「愃さまはとても強くて、心の優しい方です」
そう、いつだって愃は留花の心の支えであり、希望であり、誇りだったのだ。そのことを留花は是非、彼に伝えたいと思ったが、一体、どのような言葉で言い表せば良いのか判らなかった。
その留花の心など知る由もない愃がフッと自嘲めいた笑いを洩らした。
「愛しい女の一人を、いや、我が身の生命すら守れず、覚束なくなっている私のどこが強いと?」
実の父親に今、まさに死に追い込まれようとしているこの時、愃のように普段は物事に動じない人でも心は揺れるのだろう。
留花は愃の心の葛藤を思うと、哀しかった。愃の心をこれ以上波立たせないようにと、慎重に選び出した言葉を紡いでゆく。
「私にとって、あなたは大切なただ一人のひとです。そんな風にご自分を貶めるようなことをおっしゃるのは、春風のように優しい愃さまには似合いません」
「愃さまはとても強くて、心の優しい方です」
そう、いつだって愃は留花の心の支えであり、希望であり、誇りだったのだ。そのことを留花は是非、彼に伝えたいと思ったが、一体、どのような言葉で言い表せば良いのか判らなかった。
その留花の心など知る由もない愃がフッと自嘲めいた笑いを洩らした。
「愛しい女の一人を、いや、我が身の生命すら守れず、覚束なくなっている私のどこが強いと?」
実の父親に今、まさに死に追い込まれようとしているこの時、愃のように普段は物事に動じない人でも心は揺れるのだろう。
留花は愃の心の葛藤を思うと、哀しかった。愃の心をこれ以上波立たせないようにと、慎重に選び出した言葉を紡いでゆく。
「私にとって、あなたは大切なただ一人のひとです。そんな風にご自分を貶めるようなことをおっしゃるのは、春風のように優しい愃さまには似合いません」
