
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
留花は何度でも子守歌を歌った。喉が嗄れるまで、延々と歌い続ける。
と、留花の歌声が途切れる。
膝の上で留花の手と重ね合わされた愃の手がかすかに震えていたのだ。
「泣いているのですか?」
愕いて訊ねると、ややあって、小さな声が返ってきた。
「泣いてはおらぬ」
繋いでいない方の手を持ち上げ、軽く振って見せる。だが、彼の眼の上に置かれていたもう片方の手のひらはしっとりと濡れていた―。
愃は頬を流れ落ちる涙をぬぐおうともせずに眼を見開き、仰のいている。
「私の顔を見ないでくれ。私は多分、醜い顔をしているだろう」
「醜くなんかありません」
「いや、そなたは私という人間を買い被り過ぎている。私は弱い、どうしようもなく弱い男だ」
と、留花の歌声が途切れる。
膝の上で留花の手と重ね合わされた愃の手がかすかに震えていたのだ。
「泣いているのですか?」
愕いて訊ねると、ややあって、小さな声が返ってきた。
「泣いてはおらぬ」
繋いでいない方の手を持ち上げ、軽く振って見せる。だが、彼の眼の上に置かれていたもう片方の手のひらはしっとりと濡れていた―。
愃は頬を流れ落ちる涙をぬぐおうともせずに眼を見開き、仰のいている。
「私の顔を見ないでくれ。私は多分、醜い顔をしているだろう」
「醜くなんかありません」
「いや、そなたは私という人間を買い被り過ぎている。私は弱い、どうしようもなく弱い男だ」
