
手紙~天国のあなたへ~
第6章 別離
「留花―、許してくれ。私の素姓について口を閉ざしていたことが、それほどまでにそなたを苦しめ追いつめていたとは思わなかった。むろん、そなたが不審に思っていたことは薄々勘づいてはいたが、私にはどうすることもできなかった。いちばん良かったのは、私が自分の気持ちを抑えることだった。―そなたへの恋心をこの胸におさめ、そなたに近づくべきではなかったのだ」
愃は緩く首を振った。
「しかし、今となっては、もうどうにもならぬ。私は初めて出逢ったその日から、そなたに魅せられ、片時たりとも忘れられなかった。だからこそ、そなたに知られぬようにこそこそとそなたの家や身許を調べ、自分から近づいていったのだ。この想いを遂げてしまって以後は、そなたとの拘わりを世間に知られず、私の正体をそなたに知らせぬことがせめてものなし得ることだった」
愃は緩く首を振った。
「しかし、今となっては、もうどうにもならぬ。私は初めて出逢ったその日から、そなたに魅せられ、片時たりとも忘れられなかった。だからこそ、そなたに知られぬようにこそこそとそなたの家や身許を調べ、自分から近づいていったのだ。この想いを遂げてしまって以後は、そなたとの拘わりを世間に知られず、私の正体をそなたに知らせぬことがせめてものなし得ることだった」
