
手紙~天国のあなたへ~
第5章 夫婦
それは朝鮮に古くから伝わるごく一般的な子守歌だ。その歌を愃が母から聴かされていたとして何の不思議もない。
それとは別に、留花には素朴な疑問があった。もしかしたら、そのことが愃の深い孤独の原因かもしれない―。
「愃さまが幼い頃、お母君の膝枕でお眠りになることをお父君は快く思われなかったのですか?」
しばらく応えはなかった。やはり立ち入りすぎた質問であったかと思った時、愃が低い声で言った。
「男子たる者は強くあらねばならぬ、それが父上の信条であり持論だ。殊に私は跡取りの総領息子だから、一切の甘えは許されなかった。だからこそ、物心つく前に、母の許からも引き離されたのだ。母親に育てられれば、軟弱な男になるとの父上の配慮だった」
「愃さまはその時、お幾つに?」
「―私はその時、二歳だったよ」
それとは別に、留花には素朴な疑問があった。もしかしたら、そのことが愃の深い孤独の原因かもしれない―。
「愃さまが幼い頃、お母君の膝枕でお眠りになることをお父君は快く思われなかったのですか?」
しばらく応えはなかった。やはり立ち入りすぎた質問であったかと思った時、愃が低い声で言った。
「男子たる者は強くあらねばならぬ、それが父上の信条であり持論だ。殊に私は跡取りの総領息子だから、一切の甘えは許されなかった。だからこそ、物心つく前に、母の許からも引き離されたのだ。母親に育てられれば、軟弱な男になるとの父上の配慮だった」
「愃さまはその時、お幾つに?」
「―私はその時、二歳だったよ」
