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手紙~天国のあなたへ~

第5章 夫婦

 この方は、何と哀しげに微笑まれるのだろう。本来は朗らかな気性なのに、こうして時々、とても淋しそうな表情をなさる。
 何とお気の毒でお可哀想な方!!
 一体、何がこの方をここまで追いつめ、孤独へと追いやってしまったのだろう。
 叶うなら、愃を底なしの孤独から解き放ってあげたい。留花は強くそう願っていたけれど、愃のことを何一つ知らない身では、何もできなかった。
 留花ができるのは、ただ時折訪ねてくる愃がせめてこの家にいる間だけでも居心地よく過ごせるようにするだけ。
「留花、何か歌を歌ってくれぬか」
 唐突に言われ、想いに耽っていた留花は戸惑った。
「歌―ですか?」
「何でも良い」
 そう言ってから、思い出したように愃が叫ぶ。

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