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Memory of Night2

第3章 名前


「それもうちの事務所の子だよ」


 水と炎。先ほどの人魚のポスターとは、対照的な写真だ。

 ポスター全体に燃え広がった、オレンジ色の業火。その中心には全身を甲冑で覆い、槍を構える少年の姿が写っていた。

 顔はよく見える。真っ赤な長い髪を振り乱し、こちら側を睨みつけている。

 その迫力に圧倒されて、宵はしばらく身動きできなかった。


「よく撮れてるだろう?」

「……なんなんですか? このポスター」

「事務所の宣伝用に撮影したものだよ。三年に一度、その年に入所した新人の子を使ってこういうコスプレ的なの撮るんだ。ホームページに掲載したり、パンフにして学芸スクールやら雑誌に売り込んだり、ポスターにして貼りだしたりしてるのさ」

「なんでコスプレ?」

「コスプレというか、何かしらテーマを決めてファンタジックにしてるだけ。インパクトって大事だろ?」


 インパクト。宵はもう一度ポスターに瞳を向ける。

 人魚と、槍を持つ甲冑の少年。雰囲気はだいぶ違うけれど、インパクトは確かにある。

 一度見たら頭から離れなくなりそうだった。

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