
あたしのご主人様!
第2章 ご主人様とピンクローター
それはSMという未知の世界に対してなのか、それとも目前のこの人に対してなのか。よくわからなかったけれど。
ネットで、しかも出会い系サイトで知り合った人だし何よりまだ初対面。いくつものリスクはあったし、もちろん警戒を完全に解いたわけではない。
けれど、あたしは自分の中の欲望に抗(あらが)えなかった。
「――是非、お願いします」
あたしはシュウの瞳を見据え、はっきりとそう答える。
「任せて」
シュウは爽やかにウインクして見せた。
その仕草に、あたしは思わず笑ってしまう。
「じゃあ、次から調教開始で。また日程はメールする」
「はい。……そういえば、本名って伺っても大丈夫ですか?」
「シュウ」
「フルネームは?」
「まだ秘密。愛ちゃんが立派なMに育ったら、教えてあげるよ」
そう言ってシュウは意地悪く笑った。
――それがシュウとの一番最初。あたしが本格的にそっちの世界に足を踏み入れようと思った、紛れもないきっかけになった。
