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BL~中編・長編集~

第18章 バラ園

「ん…」

頭が痛い。
喉もカラカラで声が出ない。

起き上がろうとするが、体がだるくて動けそうにない。

昨日、濡れたままベッドに入ったせいだろう。
どうやら、風邪を引いたらしい。

何も出来ず浅く呼吸を繰り返していると、母さんが部屋に入ってきた。

「祐、そろそろ起きなさい…って、どうしたの!?」

俺が熱を出している事に気づいたのだろう。
母さんは慌てて俺のそばにやって来ると、額に手を当てた。

「すごい熱…ちょっと待っててね。 直ぐ飲み物と熱さまシート持ってきてあげるから。」

母さんは大急ぎで部屋を出て行った。

下で父さんと話しているのが聞こえる。
俺の事だろう。
父さんはなにやら母さんと話すと、仕事に出かけて行った。

確か、今日も真さんの家だった気がする。

しばらくすると、母さんが部屋に入ってきた。

「はい、飲み物と薬。 これ飲んで、さっさと治しちゃいなさい。」

「ん…あり…がと…母さん…」

かすれた声でお礼を言うと、母さんは優しく微笑んだ。

「いいから、今日は大人しく寝てなさい。 いいわね?」

俺は黙って頷くと、重い瞼を閉じた。

母さんは俺の布団をかけ直すと、部屋を静かに出て行った。

俺は夢の世界に落ちるまで、真さんの事を考えていた。

(真さん…なんでだろ…すごく…真さんに会いたいよ…)

真さんの顔を思い浮かべただけで、涙が目から溢れ出してくる。

(なんでだろ…あんな事されたのに…)

そこで、ようやく自分の気持ちに気づいた。

(ああ…そっか…俺…真さんの…事…が…)

俺はゆっくりと、夢の世界に落ちていった。

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