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BL~中編・長編集~

第18章 バラ園



(はぁ~…どうしよう…)

あれから一週間経った。

あの後、父さんにこっぴどく叱られた。
途中で仕事をほっぽりだしたんだから当然だ。
理由を話してないならなおさら…

あんな事言えるわけない。

真さんにキスされた。

なんて…


思い出すだけで顔が赤くなる。

(なんなんだよ…俺…)

今俺は大学の学食に来ている。
昼の学食は生徒達で賑わっていた。

一人で考えに没頭していると、いきなり誰かに後ろから抱きつかれた。

「うわっ!!」

驚いて振り返ると、そこには大学に入ってから一番仲のいい犬井 智宏(いぬい ともひろ)がニヤニヤしながら俺に抱きついてきていた。

「なんだよ…智…」

「ん? 別に~」

そう言って俺の隣に腰をかけた。

「なんかあったの?」

「え?」

驚いて智を見ると、心配そうに俺を見ていた。

「いや…祐、最近ずっと考え事してるからさ~」

「そ、そう?」

少しごまかしてみるも、智には通じないようだった。

「…真さんの事?」

「っ!!」

図星をつかれて言葉を失う。
驚いて智を見ると、悲しそうに微笑んでいた。

「な…んで…」

「だってさ~祐、毎日楽しそうに真さんの事話すじゃん。
真さんがなんとか賞を取ったとかなんとかかんとか。

なのに、真さんの家に仕事に行って帰って来たら、急に真さんの話しなくなるんだもん。
そりゃあ、気づくよ。」

智は一人でうんうんと頷くと、椅子から立ち上がった。

「まっ、気が向いたら相談しろよ。 いつでもいいからさ。」

「智…」

今までにないくらい、智に感謝しながら、「ありがとう。」とお礼を言う。

智は笑ったまま頷くと、去って行った。

「………」

明日は休日。 いつもなら父さんの仕事を手伝うのだが、こんな状態じゃ仕事にならないだろうし…それに、明日の現場は真さんの家だったので、仕事は休む事にした。

(どんな顔して真さんに会えばいいのかわからないし…)

久しぶりの休みなので、智と遊ぼうと思い、携帯で連絡をしてみる。

と、すぐに返信がきた。

内容は
『OK。 久しぶりに遊べるじゃん。 明日は俺んちでもいいか?』
というものだった。

智のメールに返信をすると、椅子から立ち上がり、残りの授業を受けに行った。

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