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どらくえ3

第3章 ナジミの塔

「ちょっとあんた達!」

ほっと一息ついたときだった。

「助けてやった、なんて思わないでよ!?」

―な、なんだ?

俺は呆気に取られて返事もできない。

少女が俺達に向かって言ったのだ。

少女と言っても、アベルからすれば同い年か、少し年下位の年齢だ。

細身で小柄、顔立ちは整っているが幼さが残る。

こんな華奢な身体で、よくもあれほど魔法を連唱出来たものだ。

人差し指をアベル達に向けて少女は続ける。

腰辺りで束ねた黒髪が揺れる。

「私だけでもあんな奴ら楽勝なんだから!大きな顔しないでよ!」

―そう言えばこいつのメラで燃やされるところだったんだ。

思い出すと腹が立ってきた。

「なんだよ!助けないと危なかっただろ!?」

「な、何よ!」

「魔法もよく考えて使えよ!当たるとこだったんだぞ?」

「それはあんたがどんくさいのよ!」

「なんだと!この暴走女!」

「何よ愚図!」


俺と少女が同レベルの言い合いを始めたのを見て、イースはニヤニヤ笑っている。

「リサ、いい加減にせんか。」

倒れていた中年の男が、顔がくっきそうな位ににらみ合っている二人をようやく止めた。

リサと呼ばれた少女がその声で我に帰る。

「そうだ!ムタイ、大丈夫?」

リサが中年の男に駆け寄る。

ムタイと呼ばれた男は青色の合わせを着ていた。
よく聖職者が着用するものだ。
体格は中肉中背。
手入れされた口髭を生やしている。
50歳位に見えたが頭に白髪が見えるところからすれば、実際は60歳位の年齢かもしれない。

ただ、顔色が悪い。
よく見れば右足が腫れ上がっている。

「ぐっ…!」

ムタイは体を起こそうとして、苦痛に顔を歪める。

「毒だな?」

様子を見ていたイースが言った。


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