
恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「三神さん!?」
「小内君、随分早いんですね。」
翌日。
予定通り七時に退院し、三十分後には屋敷に戻っていた。
「どうして、こんなに早くに…」
「それはこっちの台詞ですよ。 まだ勤務時間ではないでしょう?」
小内君が出勤するには、あまりに早すぎる。
「今日三神さんが退院されるとわかっていたので…少しでも仕事を減らしておこうかと…」
「…………」
ふぅ…ほんと、いい補佐に恵まれたな。
「ありがとうございます。」
彼が補佐で、本当によかった。
「いえ…こういう時はお互い様ですよ。」
「ふふふ。」
お互い様…か。
優しい人だ。
「さぁ…たまった仕事を片付けますか。」
「はい。」
そういえば…留架様はどこに行かれたのだろう。
『俺、これから行くところあるから。 亮にはそう言っておいて。』
携帯を見て、慌てて出掛けて行かれたが…
「三神。」
「…リチャード様…」
私の肩が震えたのに気づいたのか、小内君が心配そうに顔を歪ませた。
「ちょっと…いいか?」
「……はい。」
どうしたのだろうか。
いつもと様子が違うような気が…
「三神さん…」
「大丈夫ですよ。 また後で。」
不安そうな表情を浮かべたまま、小内君は仕事に戻っていった。
