テキストサイズ

恋ばか

第37章 ~お慕い申し上げます~

「そのことは、もう…いいんです。
問題なのは、その…」

「ニックのことか。」

ほんと、この方には敵わない。

私が話す必要なんてないのではないだろうか。

「…はい。 リチャード様のことと重なって、ニック様の話を聞いて…」

「いつから? 三神は、リチャードが好きだったんでしょ?」

いつから…

いつからだろう。

「もう…気がついた時には…」

あの方を心からお慕いしていた。

ニック様も、私に求めたものはリチャード様と同じだったのに。

「……そっか。」

最初から、わかっていたはずなのに。

いつかは、こうなるんだと。

「どうして、私は…」

わかっていたのに、どうして好きになってしまったんだ。

使い捨ての道具の分際で。

「恋って、そういうものだから。」

「ぇ…」

驚いて顔を上げると、留架様は優しく微笑んでいた。

「いつから好きなのか。とか、どうして好きなのか。とか、男だから。女だから。年下。年上。主人なのに。執事なのに…そんなの関係ない。

無条件で相手を愛せるのが恋だよ。

だって、どうしようもできないでしょ?

仕方ないよ、好きになっちゃったんだもん。」

「…………」

私の方が長く生きているのに、私よりも賢い主人。

「そう…ですね。」

私は、何度この方に救われたか。

「ニックの婚約のことが、三神を追い詰めちゃったんだね。」

「……仕方のないことです。 ニック様程の方に、婚約者がいらっしゃらない方がおかしいですから。」

おかしくはない。

留架様にだって、婚約者ができそうになったことがあったのだ。

ニック様に、婚約者ができても…

「本当にそう思ってる?」

「っ…」

あぁ…本当に…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ