
恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「ただでさえ仕事がたくさんあるのに、俺の仕事まで手伝ってもらってさ…結構無理してたんでしょ?」
「そんなことはありません。 私が管理仕切れていないだけで…」
留架様は悪くない。
それに、誰かに仕事を手伝ってもらわないと、今度は留架様が倒れてしまう。
「違うよ。 三神は悪くない。
なにも考えずに、仕事を押し付け過ぎた俺がいけないんだ。」
「………留架様。」
そんなことはない。
留架様は、世界一の主人だ。
「留架様はまだ学生なのですから、今は学業に励んで下さい。 留架様の負担を少しでも減らせるよう、今まで以上に努めます。
私は…」
そんな方に仕えられる私は…
「留架様にお仕えできて、幸せです。」
世界一幸せな執事だ。
「三神…」
「私のことは気になさらないで下さい。 今の仕事を楽しんでいるのも事実ですから。」
私の言葉を聞いて、留架様は柔らかい笑顔を浮かべられた。
「ありがとう。」
この笑顔が、一番好きだ。
自分に向けられると、とても安心する。
「失礼しまーす。 三神さん、お夕食ですよ。」
「ありがとうございます。」
ベッドの上にテーブルを出し、看護婦さんが夕食を乗せてくれた。
「あ、こちらは桜木さんのですねー。」
「「え?」」
どうして留架様の分の夕食が?
しかも、病院食ではない。
「失礼しましたー。」
「お疲れ様。」
その疑問は、すぐに解けた。
「小山先生!!」
「桜木様、お久しぶりです。」
入って来たのは、担当医の小山先生。
「やはり、残っておられましたね。 夕食を用意させて正解でした。」
「小山先生が手配して下さったんですか?」
小山先生…留架様がなにをなさろうとするのか、よくわかっていらっしゃる。
「えぇ。 アメリカからここまでノンストップでいらっしゃったのでしょう?
お腹が空いておられるかと思ったので。」
「すみません…ありがとうございます。」
少し恥ずかしそうに、留架様は小山先生に頭を下げられた。
「いえいえ。 お気になさらないで下さい。」
その後、食事を摂りながら先生と色々な話をした。
奥様も完全に回復したらしく、今では病気だったのが信じられない程元気なんだとか。
よかった。
